本記事の内容
・「アベンジャーズ/エンドゲーム」を心理学的観点で考察します
・評論本『父滅の刃』にて「アベンジャーズ/エンドゲーム」に観る父性消滅についてご紹介します
世界で大ヒットした「アベンジャーズ/エンドゲーム」ですが、大ヒットには心理学的にもちゃんとした理由がありました。
その大ヒットの理由を考察するために
精神科医で作家でもある樺沢紫苑さんの「父滅の刃」をご紹介します。
父性消滅に対して書かれた評論本「父滅の刃」
数々の映画を題材に父性消滅について考察している本書ですが、
その中に「アベンジャーズ/エンドゲーム」に関して考察している部分がありますので、
・父性とは何か?
・「アベンジャーズ/エンドゲーム」での父性消滅とは何か?
を考察していきたいと思います。
アベンジャーズ/エンドゲーム考察
ヒットの理由
「アベンジャーズ/エンドゲーム」大ヒットの理由について考察していきましょう。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)は世界で大ヒットし27.9億ドルの興行収入をたたきだし「アバター」(2009)を抜かし興行収入ランキング歴代1位になりました。
これまで登場したヒーロー達が一同に会する超大作で内容も映像も文句なしの出来に感動したものです。
今まで全シリーズを見てきたファンからすると「アベンジャーズ/エンドゲーム」は最高傑作であり、大ヒットにはなんの疑問も抱きませんでした。
ですが、この世界で大ヒットしたのにはちゃんとした理由があったのです。
ただ内容や映像が面白かっただけではなく、心理学的にも理由がありました。
その理由は現実世界で起こっている事と深くかかわっています。
その理由を考察するために精神科医であり作家の樺沢紫苑さんの評論本「父滅の刃」の内容を抜粋して
ご紹介してきましょう。
「父滅の刃」とは?
ポイント
・精神科医 樺沢紫苑さんによる
「父性消滅」について色々な映画で考察した著書
・「アベンジャーズ/エンドゲーム」ヒットの理由は
「父性消滅」が関係している
「アベンジャーズ/エンドゲーム」大ヒットの理由について考察する為に樺沢紫苑さんの「父滅の刃」をご紹介します。
今まで数々の著書を発表している精神科医で作家の樺沢紫苑さん。
映画好きでも有名な樺沢さんが数々の映画を題材に「父性消滅」に関して考察したのが「父滅の刃」です。
本書「父滅の刃」は
2012年発表の「父親はどこへ消えたか」の加筆版となっています。
前作の内容はそのままに最新作映画の「アベンジャーズ/エンドゲーム」や「天気の子」「鬼滅の刃」を題材に考察した部分が加筆されています。
前作「父親はどこに行ったのか?」を読んだ人も、まだ読んでいない人も楽しめる内容になっていますので、是非とも手に取って読んでみて下さい。
今回はこの中の「アベンジャーズ/エンドゲーム」について考察している部分を抜粋してご紹介します。
父性とは?
ポイント
・強さ、たくましさ
・ルールや規範を示すもの
・社会での生き方を示すもの
「アベンジャーズ/エンドゲーム」の大ヒットの理由を考察するためにキーワードになってくるのが「父性」です。
そもそも「父性」とは何なのか?
父性とは子育てにおいて父親に期待される資質のこと。
母性というのは
優しさ、寛容さ、包み込む
ものですが、
父性というのはその逆で
強く、厳しく、切断する
というものです。
子供に我慢や規範を教え、社会に出ていけるようにするものと説いています。
樺沢紫苑さんによると、全世界でこの「父性」がなくなってしまっているというのです。
その世相を反映するかのように「アベンジャーズ/エンドゲーム」は制作されているので
全世界で受け入れられ、大ヒットになったと考察しています。
それでは各シーンでの「父性消滅」の象徴を見ていきましょう。
アベンジャーズ/エンドゲーム考察【アベンジャーズ/エンドゲームが終わらせたものとは?】
「アベンジャーズ/エンドゲーム」の大ヒットの理由を考察するためにキーワードになってくるのが「父性」です。
今現在、全世界でこの「父性」がなくなってしまっているというのです。
この「父性消滅」の象徴を作品の随所に観ることができるのでそれぞれご紹介します。
ソーが太っちょに
ポイント
最強だったヒーローが見るも無惨な姿に変わり果てた「父性消滅」の象徴
今作のソーは前作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」でサノスを止められなかった事に責任を感じて自暴自棄になり、引きこもってゲーム三昧の生活になり、見るも無惨な太っちょの体型になってしまいました。
しかも物語が進めば元の体型に戻ると思いきや最後の最後まで太ったままでした。
今までのシリーズを観ていたファンにとってはすごいサプライズでしたが、まさか「父性消滅」の象徴だったとは考えもしませんでした。
・力強いヒーロー=父性
・弱々しいヒーロー=父性消滅
確かに今回のソーは今までのシリーズでの自信に満ち溢れた姿とはかけ離れており、とても弱々しく描かれています。
過去に戻った際に、失った自信を取り戻そうと今は亡き母上に悩みを相談するシーンがあります。
その姿は確かにヒーローらしからぬ、まさに子供の様でした。
ですが映画を観たときの私個人の感想としては、そんな弱々しいヒーロー像に嫌気がさすわけでもなく
むしろ苦悩しているソーに共感して親近感すら湧いていました。
この弱々しいヒーローをなんの違和感もなく受け入れていることこそがすでに「父性消滅」時代の住人といえるのではないでしょうか。
「アベンジャーズ」シリーズ
ポイント
10人以上が集まって力を合わせないと敵を倒せない。ヒーローの弱体化の象徴
アベンジャーズシリーズは色々なヒーローが一同に会して戦うのが売りです。
今まで単独映画で活躍していたヒーロー達が集まることこそがテンション上がるポイントです。
ですが、樺沢さんによればこのヒーロー達が集まらなければ敵を倒せないという状態こそが「父性消滅」の象徴と言っています。
ヒーローが集まらないと敵を倒せないというのはヒーロー弱体化の象徴です。
・圧倒的な正義、圧倒的に頼れる存在=父性
・ヒーローが弱体化しているという事はこの圧倒的に頼れる存在がいない=父性消滅
という事です。
現実世界に規範となる「父性」が存在しないので映画で「父性」の象徴、圧倒的に頼れるヒーローを描いてもヒットしない時代になっているという事です。
私も当時「アベンジャーズ」(2012)が公開されたときはそれはもうテンションが上がったものです。
今まで単独映画「アイアンマン」(2008)「インクレディブル・ハルク」(2008)「マイティ・ソー」(2011)「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(2011)で
活躍していたヒーロー達が一同に会する作品であり、各ヒーロー達の掛け合いが見られて興奮したものです。
「やっぱヒーローはたくさん出てきた方が興奮するでしょう!」と盛り上がっている時点で
ヒーローの弱体化を受け入れており、「父性消滅」の時代を生きているのだなと改めて思わされます。
タイムトラベルについて
ポイント
正義も規範もない、ルール違反の後出しじゃんけんという「父性消滅」の描写
前作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」でサノスによって人口の半分を消滅させられた世界、
ヒーロー達は過去に戻ってインフィニティ・ストーンを集め世界を元に戻そうとします。
心理学的にみるとタイムトラベルはなんでもありの戦法でルール無用の作戦という事です。
確かにこれをオッケーにしてしまうとなんでもありの展開になってしまうのでそう言われれば納得でもあります。
・ルールや規範を示すもの=父性
・タイムトラベルはルール違反の後出しじゃんけん=父性消滅
ですがこのタイムトラベルをする展開はファンにとっては過去の懐かしいシーンやキャラクターが随所に登場するので激アツの展開でした。
今まで全シリーズを見てきたファンに対する恩返し的な作品です。
この展開にもなんの違和感もなく受け入れて楽しめたという事こそ、
「父性消滅」の時代を生きている証拠だと思います。
アイアンマンの死
ポイント
正義の味方、父性的なヒーローの終わり、「父性消滅」を高らかに宣言した作品
今までマーベル・シネマティック・ユニバースを牽引してきたアイアンマンが死ぬ事はファンにとっても大変ショックでした。
もう今後「アベンジャーズ/エンドゲーム」を越える作品は登場しないだろうとも思わせます。
そんなマーベルを代表するアイアンマンの死はファンにとっての悲しい出来事に留まらず、映画界に迫っている大きな転換期の象徴だというのです。
今までヒットしてきた正義のヒーローが活躍する王道の映画は終わりを告げたという事です。
それは現実世界に「父性」が消滅したことで父性=正義のヒーロー
の構図が受け入れられなくなっているというのです。
今後ますますこの流れは加速し、女性ヒーローが活躍する映画、悪役が活躍する映画など、今までとは違ったヒーロー映画が流行るという事です。
・正義の味方=父性
・正義の味方の死=父性消滅
アベンジャーズ/エンドゲーム考察【まとめ】
ポイント
★父性とは
・強さ、たくましさ
・ルールや規範を示すもの
・社会での生き方を示すもの
★父性消滅の時代だからこそ父性消滅を象徴した「アベンジャーズ/エンドゲーム」が大ヒットした
★アイアンマンの死は父性的なヒーローの終わり、「父性消滅」を高らかに宣言した
以上のように「アベンジャーズ/エンドゲーム」が終わらせたのはサノスとの壮絶な戦いだけではなく、
現実世界でのヒーロー映画のあり方、圧倒的正義が活躍する映画も終わらせたのです。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」の後日談の映画「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」も既にその流れが始まっており、主人公のピーターはまだ少年で頼りないですし、宿敵はまさかのドローンだったという。
圧倒的なヒーローもいなければ圧倒的な悪も存在しない、混沌とした時代に突入しています。
今回、樺沢紫苑さんの「父滅の刃」を読み「まさかそんなのこじつけじゃないか」とも思いましたが、現に「アベンジャーズ/エンドゲーム」に熱狂し、なんの違和感もなく楽しんだ自分がいますので、それを思うと「父性消滅」の現代をまさに生きているのだなと思わされます。
父性が消滅した時代、自分の子供達はこれからどの様な人間になっていくのか、自分も父親として改めて父性について考えるきっかけになりました。
父性が消滅している時代だからこそ、父性とは何か?を知っておくのはとても大事だと思います。
せめて自分の子供には父性のかけらだけでも示せればと思います。
「父滅の刃」是非とも皆さんに読んでもらいたい1冊です!
この一冊で父性に関してもわかりますし、今まで見てきた映画の観かたも変わります。
現在大ヒット中の「鬼滅の刃」の観かたも変わります!
一冊1600円
一回映画館で映画を観に行くと思えば安い物です。
この一冊で今後見る映画の観かたが変わるとしたら読んでみたいと思いませんか?
是非とも読んでみてください!